言葉をめぐる熱狂 第一楽章
佐々木青

  徹頭徹尾、疾走して


しかし敵は言葉そのものにちがいなかった
いちばん近くにありすぎて
誰も言葉が脳みそのジュースを
ストローでおいしく啜っているとは
思いもしなかったのだ
それに気付いた〈彼〉というのは
他人よりジュースが少なかったおかげ
もう吸われつくされちゃった
みんなは今、吸われてる真っ最中で
いつのまにか蚊に血を吸われてしまうように気付かない
「ハハハハハ、オマエタチハ、ワタシガイナケレバソンザイシナイモ同
然ダ」
脳みそのジュースの多い
利口な者はいつも言葉への反逆を試みる
何をするって
言葉を壊しにかかるわけ
「いつまでもやられっぱなしでたまるかよ! 」
いきりたって鉄パイプでなぐりつける
(フフ、利口ナノニ)
だが、どんな物質も破壊したところで形を変えるばかり
そのものはなくなりはしないノデス
シナイノデス

これまたある利口なヒトは、その逆もする
別製のハンドソープとアルコールで清潔にした手のひらで
赤ん坊を愛でるようにやさしく言葉を愛撫し、信仰する
「ああ、あなた以上に私の繊細な心のうちを語って下さるものは在りま
せん。どうか私の心をお示しください」

ウバワレタノハドッチダ?
紙の上にならんだ言葉の数々に
アナタノココロハ
ココロハ、ココロノナカニダケソンザイスル
ココロヲ言葉ニシタラ、ソレハ、タダノ言葉ダ!

言葉は哄笑する

みんなも哄笑する


自由詩 言葉をめぐる熱狂 第一楽章 Copyright 佐々木青 2011-09-08 04:01:12
notebook Home 戻る