日にち薬あります
イオン
とても嫌なことがあって
気晴らしにいつもと違う道を帰ったら
スーパーの裏にあった調剤薬局
何気なく見た張り紙に
「日にち薬あります」と書いてあった
店内はごく普通の薬局で
笑顔の職員が声をかけてきた
「あの、貼り紙の日にち薬ってなんですか?」
「あぁ、日にち薬ですね
体も心も時間をかけて治ろうとするので
その手助けをするクスリですよ
健康保険はききませんが
あの、先生からの処方箋はありますか?」
「あっ、いや、ないです
その、日にち薬って何かなぁと思って
そんな飲み薬があるとは知らなくて」
「あぁ、飲み薬じゃないですよ、話すクスリです」
「どういうことですか?」
「これ案内のチラシです
薬局の職員と電話したり
会ったりして、毎日話しをします
新しい出会いですね
出会いで時間の経つのを早めるのです」
「あぁ、そうですか解りました
ありがとうございます」
なるほど
デート喫茶ならぬデート薬局とは
恐れいった翌日
薬局の隣のクリニックに行ったが、医師は
「このぐらいでは日にち薬はいりませんね」
とあっさり診断を下した
そうなると、是が非でも行きたくなるもの
だから、もっとすごい嫌な事が起きて欲しいと
願う毎日なのだが、なかなか来ないし
ちょっとした嫌な事が苦にならない
まてよ、これも日にち薬?
初出:ことばCAN 2011/04/03(日)を改定