さかなつり
古代 透

   
 捨てられた砂漠と 
 魚釣りにいく

 嵐が来たらしく
 船が幾つも 幾つも
 夏の虫のすべての死を
 並べたように
 海を埋めつくしている

 防波堤から
 最初の船に飛び乗り
 後ろをふり向き
 砂漠に手を貸す

 そうして
 横たわりひっくり返る船を
 朝がきりりと次の国へ
 去ってしまうまで
 次から次へ
 渡っていった

 船と船のすきまに
 海が浮いているのを見つけ
 ぼくらは釣り糸を
 垂らした

 どんな魚が釣れたらいい
 砂漠はあくびをしながら
 秋刀魚がいいなと言った
 
 昼の透けていくほうを
 釣れないままに
 眺めていると
 白い筋が
 立ち上っていた
 
 竜巻かな
 早く帰らなくきゃね

 砂漠はなにか
 物思いにふけっていて
 まだ釣れてないよ
 もう少しと
 首を横にふった


自由詩 さかなつり Copyright 古代 透 2011-09-06 13:15:06
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