ヒグラシ
たもつ
ヒグラシが鳴き始めた
雨は降ったり、降らなかったり
時々、知らなかったり
フラスコ売りの兄は
すべてのキャベツを刻み終えると
沈まない潜水艦に乗って
埼玉に帰っていった
父はベッドに寝たまま
これから俺はどこに行けばいいんだ
と言って小銭入れを握りしめている
もう死にたいよ、と母が呟く
俺だって死にたいよ、と返す
いいんだよ、明日になれば
みんな忘れてるんだから
誰も何も覚えてないんだから
自由詩
ヒグラシ
Copyright
たもつ
2011-09-04 18:55:16
縦