渇いた氷
木屋 亞万

庭にドライアイスを吐き捨てた
僕の肺の底に溜まっていた汚物
吐き出せなかった二酸化炭素が肺に堆積して
静かに冷えて凍ったもの

空気を吸うのと同じだけ
吐き出すことが出来ればいいのに
いつも息が詰まってしまって
少しずつ息苦しくなっていく

夏の熱気と湿気の中で
庭の雑草は狂ったように成長している

僕の手足はするすると細くなる
ぽっこりとお腹だけが出てくる

ドライアイスは夏の庭で
忌々しそうに煙を吐く
縦横無尽に生い茂る雑草の上で
気だるそうに寝そべりながら

 お前の中に堆積した
 吐き出せずに
 我慢したものどもが
 いつの日にか
 お前の見えないところから
 ぼろぼろと零れ落ちて
 お前の醜態をさらすだろう

ドライアイスは言った

僕の耳はもう自分の内側の声しか拾わない
僕の口は元々言葉を受け入れるようには出来ていない
だからあなたのくちづけを待っている

あなたが僕の口から渇いた氷を吸いだして
僕を目覚めさせてくれるのを待ってる

僕はもう
ずっと
庭で
倒れたまま

あなたを呼んでいる


自由詩 渇いた氷 Copyright 木屋 亞万 2011-09-04 04:13:15
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