野良猫その0
……とある蛙


岬の突端にある一本杉
その根元に猫の額ほどの草原
崖下に望める港町は
なだらかな坂のある町で
火の見櫓以外高い建物もなく
斜面にへばりついた
小さな小さな灰色の箱の集落

漁船が停泊している
船着場には漁船以外何もなく
漁師町であることが
瞬時に分かる

猫の家族
母猫と三匹の子猫
子猫の眼は見えない
その家族を狙う鴉
ミューミュー鳴く三つの口

草むらに潜む蛙を見つけ
子猫は狩りをしようと
低い姿勢で獲物に狙いを付け
尻尾でリズムを取りながら
間合いを計っている。

その上空に鴉
飛びつこうとした週間
鴉ではなく鳶が子猫をつつく
ヒトしきりの騒ぎの後


この母猫は子猫を二匹以上育てるのは
うまくない
それこそ大変だ

母猫は意を決して
岬を下る
子猫のうち一匹だけを咥えて



自由詩 野良猫その0 Copyright ……とある蛙 2011-09-03 11:53:22
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