かなしいさかな
千波 一也



水の
こぼれ落ちる音が、すき

みずしらず、な
はずもないのに

わたしはまったく
かなしいさかな



水が
なくのを
聞いたことがない

そのくせ
わたしは過ぎて
いく



水も
わたしも
きれいが、いい

理由は
おのおの違っても



水を
わたしは
飲み干せない

飲み干せたなら
溺れない、
のに



水に
なれない
わたしはさかな

すべてを
言葉のせいにして

わたしはひたすら
守られたがる






自由詩 かなしいさかな Copyright 千波 一也 2011-08-28 22:24:34
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