花キリン


ファッションを買いに来たのではない
笑いを買いに来たのだ
一週間も笑わないと
一日の神経の隅々まで偏屈になる
笑いを売る店が
このデパートの奥まったところにある
電話売りはしないから
薄暗い階段を歩いて上るのだが
二畳ほどの広さに滑稽な飾り物が沢山あって
店主が蛙顔に似ているから
まずここで笑える
カタカタと頭蓋骨が歩いてきて
骨の窪みにしまい込んだ甲高い声で
商品の説明などもしてくれる
品物を触りながらゆっくりと店を一巡すると
重たいものが浮力し始める
商品には値札がないから持ち帰ることができない
それでも独り者には十分だ
こんな店が
デパートの中に一軒くらいあっても良いのだが


自由詩Copyright 花キリン 2011-08-25 06:25:13
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