モンゴロイドの旅
梅昆布茶

アフリカの大地に曙光がおとずれた朝

遥かなるネグロイドの神が大地にいのちをあたえ

僕たちの元初の曾祖母がおごそかに懐胎して

DNAの長いながい旅が始まった

ユーラシアに流れ出た血脈は
コーカソイドとモンゴロイドに
分流して
大地に吸い込まれてゆき

海流にのってミクロネシアやオセアニアへと漂着する

とよあきつ瑞穂の国を縄文のダイナミズムが席巻し

弥生の理性が神話の調べを奏ではじめると
天の岩戸の
重い扉も開きはじめる

中央アジアを経てシベリアで凍えたモンゴロイドは

ベーリング海狭を渡る風とともに
アラスカを走り抜け
ロッキーの峰を仰ぎ
アステカに足跡を残しインカの光となり
ナスカの地上絵を描いた

地球48億年の微かな断片に記されている記録は

さらに生命の系統樹にのみこまれ

やがて宇宙の
谺となって
星間物質の海へと
拡散して
ゆくのだろうか

ぼくの本当の母はだれ

それは宇宙から降ったアミノ酸の小さな小さな
切れ端だったのかもしれない



自由詩 モンゴロイドの旅 Copyright 梅昆布茶 2011-08-23 21:33:24
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