わすれもの
佐々木青

大切なものをわすれてしまった
気がするけど
何をわすれたのか思い出せなくて
それはすでに
わすれたことをわすれたのと同じように
もう意味なんかなくて
でも
あんまり利口じゃないから
どれだ どれだ と
街を歩いてさがしだす
ある晴れた日の
うららかな昼下がり
わすれられたものたちの
おおぜい集る街の
ショーウィンドウにならぶものに
おねえさんの
風にもなびかぬほどの
短いスカートが
おおきく口をあけて
すらりとのびた

がある
おねえさんは
派手だから色っぽいのか
色っぽいから派手なのか
考えてたら
わからなくなって
帰って
ネットで調べることにして
おねえさんのスカートを
風のように通り過ぎる
午後
わすれものなどわすれてしまうほどに
わすれゆくものたちは
また
どうでもいいように
わすれていく


自由詩 わすれもの Copyright 佐々木青 2011-08-23 15:46:16
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