エール
相差 遠波

「芸と言うのは、所詮、太平の世にしか咲けぬ華なのか。嵐が来れば艶やかな花弁を散らし、冬が来れば枯れ行くしか術はないのか。」
「されど花の種は冬を越すがために有る物。春を迎えて芽吹く物。青嵐が来ねば稲は実らず、冬を越さねば桜は咲きませぬ。花を咲かすには根も葉も要りまする。乱という冬にこそ、踏まれても立ち上がる芽を出すのです。それが、今日まで芸の絶えずに在る所以かと、私見ながら・・・。」

 鵯の三声鳴く。


散文(批評随筆小説等) エール Copyright 相差 遠波 2011-08-23 09:08:40
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