手を繋いでいる
たもつ

 
 
どこかで小型犬が吠えている
真夏なのに帽子を被った女性の人が
オレンジ色の自動車を運転している
ガソリンは昨日より一リットルあたり二円安い
空は曇っている、天気予報士がしゃべったとおりに
さっきまで、きみと手を繋いで歩いていたはずなのに
いつの間にか壊れたメトロノームを引きずっている
メトロノームは壊れていく
外側のプラスチックはあちらこちら欠けて
いろいろな音をたてて壊れていく
同じくらいの背丈の人とすれ違う
その背中ではセミの幼虫が羽化している
観察日記をつけながら少年がその後を歩いて行く
もしかしたら、きみ、なんて人は
最初からいなかったんじゃないか、と思い始めてる
でも、実際にこうして手を繋いでいるし
いくつかの口癖も鮮明に思い出せるのだ
 
 


自由詩 手を繋いでいる Copyright たもつ 2011-08-22 17:48:22
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