愛猫
三奈
膝の上の猫
まるで愛おしい生き物でも見るような目で
わたしを見てにゃーと鳴くの
通り雨降る、夏の午後
その視線を
すり寄ってくる体温を
振り払いたくてそっぽを向いた
うっとうしくて、邪魔くさい
だけど手放すことはできない温もり
心地よい距離は、いまだ見つけられないまま
夏雲は消え、向日葵は土に還り
いつのまにか秋の気配は
すぐ傍まで近づいていた
膝下の猫は相変わらず
寂しがり屋でにゃーと鳴き
秋色の私は「仕方ないな」と
ため息ついて微笑むの
うっとうしくて、邪魔くさい
だけど手放したくないその温もり
愛される事に慣れないまま
愛し方も分からないまま
季節は巡る
少しの希望と願いを乗せて
どうかどうか、願わくば
粉雪降る、冬の朝
私は猫になっていたい
甘えるように喉を鳴らし
寄り添って丸くなっていたい
猫と人の境界線のど真ん中
消ゆく星々に
そんなことを願った