通夜ー改訂版
……とある蛙


丘の上に立つと
夜空にはたくさんの発光体が
空に向って地上から降り注いでいるのが見える。

一様に
ボーっと輝いているが
明るさにはほど遠く
夜空に闇に吸い込まれて行く



広い斎場に白黒の鯨幕
白い祭壇
そして、黒尽くめの男二人

一人は白髪の丸顔小太り
一人は長身禿頭痩身

一人は涙ぐみ
一人は虚空を睨む

広い斎場に
喪服の男二人

一人は虚空を睨み
一人は声を上げて泣いている


二人は亡骸の子供
二人は初老の子供

ともに子は無い
ともに独身
他に家族はない。

広い斎場に家族三人
一人は亡骸になり
一人は何かに怒り
一人は大いに悲しむ

二人は兄弟で
二人は仲が悪い

祭壇の亡骸に手を合わせるものは
弟の仕事関係者だけで
兄に仕事は無い

三々五々の弔問客
痩身の兄は何思う
涙顔の弟は何思う

ともに大好きだった母を失い
母がこの世に残した忘れ形見二つ
二人の男の子

一つ 家族が消え失せた。



喪服を着たおばさん四人
交差点を渡り、口々に話す。

一人は楽しげに
久しぶりねぇ
などと通夜であることを忘れ

一人は怒ったような顔をして
どうしてなんでしょうねぇ
などと宣う

一人は困ったような顔をして
なにも語らずに
下を向き俯いたまま黙っている

一人は寂しげに

語ろうとしたが、
ふっと溜息をつく

そのまま四人は何もなかったような
日常に戻る

ヒト一人死んだ。

そして、夜空に向かって降り注ぐ光
ひとたま


自由詩 通夜ー改訂版 Copyright ……とある蛙 2011-08-22 12:43:40
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