環境論Ⅵ
ヤオハチ

人の顔を撮るのをつい忘れるので

フィルムが10枚くらい余ると

必ず猫を撮る

しっぽだけ黒いしろねこ



撮ることに決めていた

実際のところ

それしか撮る物はないように

思えていた

猫は同じ所にいる

ようでいて

同じ猫である

ようでいて

少しずつ異なっていた


悔いのないように生きよと

最近

ご近所様によく言われる

先日

悔いの残りようのないスピードで

あなたを横切ったのは確かに

あたしだったのかもしれない

しかし

残らなかった悔いの分

フィルムは残り

あたしは

その度にしろねこを探す

やはり

同じような所に

彼女はいる

同じような所にいても

あたしは

悔いすら残せないというのに


人の顔を撮るのをつい忘れるので

フィルムが10枚くらい余る

でも

使い忘れたフィルムの中にこそ

近しい方々がたくさんいて

申し訳なくて

今日もしろねこを探す

できれば

何も残せなくとも

また

お会いしたいと思う







自由詩 環境論Ⅵ Copyright ヤオハチ 2011-08-21 07:58:51
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