ペットボトル症候群
nonya


本当の名前なんて
一度も書いてあったことがない名刺を
感じ良く差し出す空っぽな指先

本当に行きたい場所へ
一度も連れていってくれたことがない
少しくたびれた空っぽな向う脛

どんなに満たしたつもりでも
必ず隙間が出来ちゃうのは
自分の何処かにある亀裂から
中身が滲み出しちゃってるせいだけど
あまり考えないようにしてるんだ
軽〜く身体を揺さぶれば
ポッチャンピッチャンと
笑うことだってできるしね
それよりもなによりも最近は
どんな中身を入れてやろうかと
あれこれ考えるのがマイブーム

右の二の腕には
思いっきりわがままな炭酸飲料を注入
満員電車と日替り定食の間で発泡

左の掌には
呆れるほどのんきな緑茶を注入
とりとめもない妄想の上空を浮遊

右の太股には
今さらながらスポーツドリンクを注入
ウィンクし始めた青信号めがけ疾走

左の土踏まずには
純真無垢な100%天然果汁を注入
似たり寄ったりのモノクロな毎日を一蹴

いろんな味が混ざっちゃったら
中央アルプスのおいしい水で
シャカシャカ洗い流せばいいんだよ

本当の名前を
思い出しそうになるたび
はからずもハミングしそうになる唇

本当に行きたい場所を
突き止めそうになるたび
はばからずスキップしそうになる爪先

まだまだ
ポッチャンピッチャン楽しむんだから
まだまだ
リサイクルなんかされてたまるかっ




自由詩 ペットボトル症候群 Copyright nonya 2011-08-20 09:58:51
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