晩秋
花キリン


秋の言葉を山盛りにした籠には
色とりどりの付箋が貼ってある
坂道の先の赤トンボが群れている辺りに
配達する家があって
どんな挨拶を交わして
玄関を入るべきかを考えている

素肌に纏っているものは
そう多くはないのだが風は冷たく
道行く人に挨拶するのも小声になっている
天空から見下ろすような錯覚を
石段の一つに置くと
私の足もとには晩秋の影が重なろうとしている

ピンポンとチャイムを鳴らすと
粗末な玄関が開けられて
人の気配が懐かしくなる香りがしてくる
付箋が貼られた言葉を一つずつ手渡しながら
季節が熟すときをお互いに待つことにした
明日はより寒さが増すことだろう


自由詩 晩秋 Copyright 花キリン 2011-08-20 06:31:38
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