Earthbound(VCS3)
木立 悟





ひとつの錐と
ひとつの傷
その間にあるものすべてが
錐により傷に押し込まれてゆく
錐により 錐により 錐により


奏でる前に
降っていた
奏でられるはずのものが
降りつづいていた
誰も奏でてはいないのに
何も奏でてはいないのに


暗がりに
かろうじて錐は見えている
表すものを 
表すことなく表そうと
ただ細く深い傷に向かう


骨を伝う音
影のようにひろがる水
独つ目の灰が空をすぎ
鱗の光と指を巡る
(複眼の朝 複眼の朝)


くちばしが
青黒く光り
土に刺さろうとしている
(うたをうたおうとしている)
(うたをうたおうとしている)


晶 鉱 鱗 蛍
手さぐりの視覚 空に触れ
水の底に逆さまの
鋭利な虹の飛沫に立つ


まわり まわり
叩きつけられ
亀裂に埋もれ
出てはこれない
震動と怒号
(震動と怒号)
さらにさらに
爆けるばかり
さらにさらに
埋もれるばかり


一斉に在り
一斉に無く
(器 放射)
誰もいない階段の
水の傷 水の無音
影の無音に振りかえる


夜の窓の双子たち
滴の栞に濡れる指
分かり合えない調和たち
未明の足跡
街を越え
海を越えて鳴りつづく



































自由詩 Earthbound(VCS3) Copyright 木立 悟 2011-08-19 00:39:43
notebook Home 戻る