天馬
千波 一也



はてしなく
広がるものは
絶望、に他ならないから

おねがい、天馬
そのたてがみに
一度でも揺らせて
ぼくの
名を


命中しがたい
銀の矛先
大鷲の
視線

おしなべて
這うものたちは
そらからいたみを聴いている

ねえ、天馬
涙の
起源の
うなばらへ
ぼくを運んでくれないか


月の
花弁を
引き裂く爪が
ふしぎと今夜も
温かいから

許して、天馬
口にしては
ならない言葉を
こぼしてしまったこと

どうか、
身代わりに
照らされていて

どうか、
きれいにないていて


黄金が
ゆたかに朽ちるとき
それは、はじまり
物語の
孤独

きらきら、と
寂しい風に
こころを
砕いて




自由詩 天馬 Copyright 千波 一也 2011-08-14 01:27:42
notebook Home 戻る