星の牧場
梅昆布茶

ひそかに尊敬していたS先輩は
アマチュア天文界では有名人

小惑星に名前もついている
「先輩その小惑星って軌道外れて地球に落下してくるんじゃないすか〜」

ああ たぶんいい女がいればな〜
そんな感じの人だ

そんな先輩は
片隅の工場で
好きな
望遠鏡をつくりつづける
チョー地味で素敵な人

小惑星探査機はやぶさがはじめて
無人機として地球外の物質を
持ち帰ったこんにち
火星と木星の間に
浮遊周回する
小惑星帯は
少し親しい
存在なのかもしれない

そんな人達と東秩父村にある秩父高原牧場の山の頂上付近に天文台を作った。
一番高い望遠鏡の購入費は会社の光学関係のガラクタを売却したのと出しあったお金で賄った。
今でも星の里というネーミングでそこはある。

ハッブル宇宙望遠鏡は地球を周回する衛星上にあり
地球の大気内条件に左右されない
壮大で鮮明な映像を提供している

ハッブル望遠鏡は
星の美術館の
じつに巧みで
饒舌なガイド

でも秩父の山頂の
粗末なちっちゃな望遠鏡は
きっと

外宇宙のいのちをぼんやりやさしく
見せてくれる
万華鏡

くるくると
廻って
子供の頃
つるべ井戸のはたで見た明星と
先輩と秩父の古い天文台と
宇宙とかざぐるまは一緒になって
僕や誰かのこころをまわしているのだなと思う



自由詩 星の牧場 Copyright 梅昆布茶 2011-08-13 19:43:35
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