腐った弁当箱
吉岡ペペロ

院長夫婦に預けられてぼくは病院に住んでいた

病室がぼくの部屋だった

おっとりして真面目ないい子だとおばさんはよくぼくをほめてくれた

その夏、病院に大量の小虫が発生した

ちょうどその頃ぼくは弁当箱をなくした

おばさんは代わりのをすぐ買ってくれた

なくした弁当箱はベッドのしたから見つかった

ぼくは正直に言えなくて引き出しに隠してしまった

ぼくの病室にもたくさんの小虫が飛んでいた

ちいさすぎて汚いとはあまり思わなかった

電気スタンドのしたが小虫の死骸だらけになった

それを定規で集めて一カ所にして遊んだ

あるとき引き出しが気になってあけると

かなりの小虫が弁当箱にくっついて動いていた

弁当箱をあけると50匹くらいの小虫のこどもがいた

ぼくはふたをしめ直し引き出しを閉じた

ぼくが小虫の大量発生の原因なのかも知れなかった

弁当箱を紙袋に入れ市営球場の近くに捨てた

院長夫婦に預けられてぼくは病院に住んでいた

病室がぼくの部屋だった

おっとりして真面目ないい子だとおばさんはよくぼくをほめてくれた









自由詩 腐った弁当箱 Copyright 吉岡ペペロ 2011-08-12 23:26:32
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