祝杯
長押 新

酔っ払った言葉に
含まれる独特の
熱を持ったアルコールが
次々と、
次々と次々と、
虚ろな目を横に
動かしていく
眠り込むあたりに
こぼれ落ちてしまう
転がる目玉を踏まないようにと
小さい子供に教える
痛いってことは
足のうらで
目玉を踏んだ足が
よくと君を憎むようなものだ


ж


ガラスの散らばった
床を歩くとき
霜を踏む音がしている
覚えている
寒い朝の土を
みんなが震えている
そこでは
踏まれる前に
半分潰れてしまった目玉が
縮こまっていて
酒に酔った人々だけが
持ち主のために
手を貸してやる
次々と、
次々と次々と、


ж


始めからそうだったように
酒が降るから
次々と、
次々と次々と、
人々はグラスを片手に
踊り歩いていく
町中が
転がり落ちる目玉を
踏まないように
拾いあげる
寒い朝には
床に落ちていたガラスが
いつの間にか
消えている
呂律の回らない
町中が
小さい子供に教えている
そこにグラスがあったから


自由詩 祝杯 Copyright 長押 新 2011-08-11 19:46:08
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