奪いたかったのは
草野春心
奪いたかったのは
肉体ではなかった
きみの内側にひそむ
薄暗く丸いものでもなかった
それは概念だった
女だった
ぼくが
命をかけて奪いたかったのは
たとえ爪をたてても
痛くも痒くもなかっただろう
愚かだった
くだらないほど愚かだった
すました顔をして
なにひとつ
きみはぼくから奪わなかった
自由詩
奪いたかったのは
Copyright
草野春心
2011-08-11 18:27:22
縦