入道雲
オイタル

コツコツ堅い青空の上に
力こぶのように積み重なる入道雲
場違いな黒雲が二つ
空の低い位置を漂流する
小さくスキップして踊るピアノの音
きれいに言葉を剥がす車たち
音声もミュートされる歩行者
黙ったまま肩越しの信号に見つめられて
右往し左往し直進する

空からの風をさえぎりながら
ごらんなさい あの
いちばん高い峰の
そのすぐ右側の
少し低い頂

あのあたりに今も
彼女が
積み上げたマンガや買い物袋を枕にして
雲の切れはしを毛布に胸元まで隠して
視線を落として
笑っているらしいです

両足を眠りの沼に突っ込んで
両手を人の間隙に突っ込んで
僕は
感情を汗のように滴らせながら
届かない青空を届かない指先で
掻きまわしている

ひび割れた白壁の感情

陶磁のような入道雲
考えあぐねた黒雲が
切れ切れに 姿を失う


自由詩 入道雲 Copyright オイタル 2011-08-08 23:02:01
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