シーシュポスの岩
blue

せっかくここまで来たのだからと
あなたは言う

あなたの言う
ここ がどこなのか知りたかったから
自分の姿を鏡に映してみた

ああ 知らないうちに
こんな姿になっていた

決して頂上に到達できないのがわかっているのに
岩を運び続けるシーシュポスを思う
あと少しというところで
どうせ この岩はまた転がり落ちる
それを
徒労だと言いたいものには言わせておけばいい
私はとにかく
シーシュポスのように
岩を運ばなければならない
それが自分自身を正当化する
唯一の手段だと思うから

いや もしかしたら
岩を運ぶ以外に ここ で
私がするべきことがないからかもしれない

もし許されて
到達した先に広がる ここ ではない どこかが
たとえ はりぼての世界でも
毒に満ちた世界でも
私は きっと歓喜の涙を流すだろう

ああ
マニキュアが剥がれている
こんな姿ではあるけれど
せめて
この指くらいはきれいにしていたい
いつかあなたが
その薄い唇に含む瞬間まで

岩に喰い込む爪には
あなたの唇に似合う
ベージュのマニキュアを


自由詩 シーシュポスの岩 Copyright blue 2011-08-08 21:38:07
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