嘔吐
はるな

これ以上泣いたり笑ったりできないくらいに疲れてそれでもお金は味方だと思った。一粒500円のチョコレートを買ったり髪の色を5日ごとに変えたりしてそれでやっと立てている感じがした。洋服より下着にお金をかけて優越をかんじた。でもだんだんとよくわからなくなった。お金を使うのにも疲れてしまった。働くことにした。歯車であるべく真面目に働いた。やっぱり疲れた。眠れなくなった。通院した。朝も夜も怠くて何もしたくないのに何かしていないとすぐに気が狂った。お酒を飲むことにした。しだいに量が増えて手足が痺れるようになった。お酒をやめた。処方が増えた。それでも足りなくなった。どこにも出口がなかった。入り口さえなかった。綺麗な下着はすべてぶかぶかになって付けられなくなった。踵のたかい靴を履くとすぐに転ぶようになったのでつっかけばかりを履いた。寒いと動けず、暑くても動けず、温ければ吐いた。食べ物がごりごりとかたくかんじた。疲れた。起きられなくなった。起き上がるのが苦痛になった。週のうち四日は寝て過ごした。肌が黄色っぽくなり、吹き出物が増えた。指先はいつでも定まらなくなった。手足がつめたくなったままこわばった。ただただ疲れていた。疲れることにも疲れてしまった。ふらふら街を歩いた。知らない人しかいなかった。何も欲しく思えなかった。果物屋の前でその匂いに吐いた。街は汚かった。でもあなたがいた。あなたは働いていた。不思議なことだった。わたしはまだ疲れていた。出口はまだ見えなかった。見えなかったけれど少し部屋が明るくなった。甘い水を飲んだ。甘いと思った。あなたがいた。それだけのことだったのだ。


自由詩 嘔吐 Copyright はるな 2011-08-08 17:06:07
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