雨の日に、2号線で
wako

   ?

土砂降りの雨の中
子猫に出会った
フワフワの子猫が
見る影もない姿になって
水たまりに横たわっている
四肢を投げ出して
濡れた毛のかたまりとなって

「ネコちゃん?」

冷たくなって
大型車が通るたびに
水しぶきをあびて
この世にやってきて
一ヶ月も経たない子猫が

   ?

跳ね飛ばされて
宙を舞いながら
短い生涯を思い返しただろうか
母猫のぬくもりや
満ち足りたまどろみ
数少ない幸せの瞬間を

私と子猫は
似た体験をした

衝撃受けて宙に浮いた
ガラスが割れて
スローモーションで落ちていき
時の感覚が歪んだのか
全てがゆっくりと動いた
車はノロノロと進んで
やがて止まった
視野の隅を
子猫が飛んでいたかも知れない

   ?

私と子猫は
しばらくの間
同じ空間にいた
私達は土砂降りの2号線沿いを
並んで歩いた
  
  こんな雨の日に
  どうして歩いてるの?
  
  見て、ネコちゃん
  この大きなリュックにはね
  おいしい物がいっぱい入ってるの
  お母さんに届けに行くのよ
  車が壊れたから歩いてるの
  ネコちゃんは?

  あのね
  お母さんが急にいなくなって・・・
  どこに行ったのかなぁ
  見つからなくて  
  ずっと一緒だったのに

  そうなの
  お母さんをさがしてるのね
  私はお母さんにさがされてるよ
  昼も、夜も、朝も
  さがされてる
  きっとネコちゃんのお母さんも
  さがしてくれてるよ
  見つかるといいね

しばらく歩くと
子猫は横道にそれて
森の方へ行ってしまった
白い沙羅の花が咲く森の方へ

車は修理を終えて
事故の痕跡もない

子猫は母猫に会えただろうか


自由詩 雨の日に、2号線で Copyright wako 2011-08-05 11:23:35
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