優等生
伊月りさ

エンマサマに舌を抜かれて一番困ることは
ともだちの味がわからないこと
手が勝手に増えたり
シナプスが複雑になったり
全部 ひとりぼっちになること

おじぎをおしえるおかあさん不足
そんな記事もう流行らない
わたしは笑うよ
わたしは速いよ
でもわたしはわたしの電源しか触れない
イマドキは散弾銃で
存在みたいな黒い猛スピードで袋小路でダウン、
左脇腹斜めに食い込んでああもう死ぬって携帯で119、
全部 おぼえているけれど
それは 勁草ではないって教育しなければ

落ちたものもウエッジウッドに盛れば
という制度の一番乱暴なことは
落ちなければ ひとりぼっちになること
そこに鏡がないこと
全部 わたし それは
なにもわからないのと同じ
宿命的なわたしだ

舌が生える前まで退行したい、
じっと額を押しつけた擦りガラスを越えるように
ともだちになりたい、という声が
こんな田舎にまでこだまする
わたしだけ夜が長い


自由詩 優等生 Copyright 伊月りさ 2011-08-04 18:30:15
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