許された危険
blue

その時
わたしの目は
久しぶりに
対象をとらえ
ああ
ぼやけていたのは
前髪が伸びたせいではなかったんだと
思ったのです

その時
わたしの耳は
久しぶりに
わたし自身の声を聞き
ああ
別れたがっていたのは
わたしの方だと
思ったのです

ようやくそこは
薄情けのわたしがいてもいい世界となって
わたしを抱きとめてくれようとしていました

足を濡らすのは
対象の指から滴り落ちる
生温かいもの
ぬらぬらと光っているのに
すぐに凝固して
足が取られるのです

そのうえ そこは 
水の裏を歩いているようで
わたしは
だんだん平衡感覚を失っていくのです

ひとりじゃないことは いいことなのですか

正気を保つために
わたし自身の声を
もう一度聞きたかったのかもしれません

前をいく対象は
黙ったまま
セミの抜け殻を踏みつけていきます

わたしは
この先崩壊していくでしょう
でもそれを
許された危険だと甘んじてしまうのが
わたしなのです


自由詩 許された危険 Copyright blue 2011-08-02 21:34:05
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