かわうそ
非在の虹

かわうそは水をくぐる
水は瑠璃色に光り、水音は鈴だ
そう言うかわうそは嘘つきなのだ
かわうその棲家は荒れて、臭気すらただよう

かわうそは魚を獲る
餌はあふれるばかり手当たり次第だ
嘘つきかわうそは得意げだが
魚はほとんどいないし、たまに捕れるものも嫌な味だ

かわうそは虫も鳥もいないことが気にかかる
空の色がみょうに赤いのも気にかかる
嘘をつく相手が減ったことが一番気にかかる

かわうそは水をくぐった
かわうそは魚を獲った
いつもと変わらないと、自分に嘘をついた


自由詩 かわうそ Copyright 非在の虹 2011-08-01 14:52:56
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