蝶であった羽
wako

かつてはお日様の下を気ままに舞い
華やかさを振りまいたであろう羽
埃にまみれてすり切れて
ひっそりと落ちている
楽しかった夜が明けて
魔法のとけた朝を迎えた様に
信頼で結ばれた関係が
ひび割れて砕け散った様に
かろうじて元の姿が想像できる羽が
土に還ろうとしている
加速度的に
色あせて

蝶であった羽

大切に大切に掌で包んでいる羽
4枚あっても蝶にはなれず
掌に護られて朽ちてもいけず
無意味な時が流れていく
まるで生きている蝶の様に羽は輝き
空中に放り投げれば
ヒラヒラと舞いそうな気がする

思い出の中を舞う蝶は
錯覚となって掌で羽を休める
握りつぶす程の憎しみもなく
振り払う程の度胸もなく

声も届かず
視線も届かない
深い深い孤独の底
時おり気まぐれに
誰かが投げかける光に反射して
モルフォ蝶の様な仄かな青い光が
ぼんやりと浮かび上がる

かつて私の心だった辺りから


自由詩 蝶であった羽 Copyright wako 2011-07-29 14:51:39
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