いない かたち Ⅲ
木立 悟






絵の具のにおい
月に触れる指
何処へもいかない


うたの行方は
異なる星
燃えおちる 燃えおちる


ひとりの内に ひとりは増し
さらにひとり
さらに緑


曇 橋 波 陽
同じところから来て
来たところを見つめる


ただ一度
よろこぶことをゆるされ
そのことに よろこべずに


夜の水銀
紅と響き
はざまに 風はふたつ


むかし逃がした
雨がすぎる
一行 あけておく


蝶の群れが
途切れることなく歩いてゆく
夜の坂に 傾く耳


冠をつくる手
鏡をつくる手に触れ
原を映す


水に見える傷
屋根に 窓に
さざめいている






























自由詩 いない かたち Ⅲ Copyright 木立 悟 2011-07-28 15:43:33
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