稲わらの火
subaru★

望んでない炎
炎にまみれた稲わらが強引にかしげる 
カーテン越しから囁く者たちは
そこから離れなさいと
ただ 唇を動かす

ありえない色
塗り替えられた あの土地で
長きにわたり 守り続けた灯火を
すり替えられた悔しさ
ただ 唇を噛む

守られたとりで
温室のゲージから
誇らしげな歌が唐突にやって来る
もういい!と声にならない声が
私達の耳につんざ

油色の歌
走り火は止まらない
跳ね返る火 触れぬよう
他人ヒトは 誇らしげに歌い直す
己の正しさを保つため

花時計
電波時計に見習って
タイムテーブルに置かれた数字
拾い集めて 女将に献上する
己の正しさを保つため

高速列車
旅客が 知る辺のない土壌に埋もれる
倒された稲わら 燃え移る炎
真相と一緒に抱かれ そして焼かれ 
黒夜に佇む人間は 死んだも同然

さげすむ悪魔
他人ヒトはカーテン越しに歌を歌う
さげすむ悪魔
民草たみくさの口に金貨を投げ込む
己の正しさを保つため

緑のカーテン
強烈な日差し かわすため
他人ヒトはカーテン越しに歌を歌う
あの土地からの怒りは容赦なく その仕草に着火する
打ち消すすべもなく

用意周到
武器庫に残った正当防衛の日傘
ポケットに 隠し持つ怒爪
国宝級の言論武装
見ず知らずの者に襲われぬ為に

己の正しさを保つために
己の正しさを保つために
己の正しさを保つために
己の正しさを保つために

ただ それだけのために


自由詩 稲わらの火 Copyright subaru★ 2011-07-28 12:17:42
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