き、き、☆
atsuchan69

き、き、

夏空にもくもくと湧き出した巨大な雲たちの間に間を、眩しい白の半袖シャツを着た大勢の子供たちがまるで天使のように飛び交い、

き、き、

炎を混ぜた白い煙をさかんに吹き出す二階建ての窓をとぎれとぎれに小さくならべて、やがて炎上する機体を左に大きく傾けると都市中心部へ力なく落ちてゆくエアバス380‥‥

き、きぃ、

ビルが倒壊する、錆びた鉄の匂いのする現場には血まみれの無残な躯がまるで恥じらいもなく幾体も瓦礫に埋もれて悪戯に首をもがれた人形みたく転がっている、

きぃ、

マイナスのドライバーの先端で男の下顎を勢いよく下から上へ突き刺した、

――おう、一度でもそのことばつこうたら、責任取らんかい 言っただけちゃうやろ そんなんですまへんのや ぬけへんやろ、そのドライバー
さらに血糊がついてヌルヌルする細身のドライバーの取っ手をしっかり持って醜い男の首から上を力まかせに持ち上げると、
――片眼、つぶしたろか!

そして鼻のあたりに幾度もいくども強烈なパチキ(頭突き)を与えた そのうち奴の前歯が折れて血の混ざった涎とともに口元をつたう
――痛みはな、まだこんなもんとちゃうで まだ、まだ、や ええか? おっさん、ワレ、世の中の恐さ知っとるのかい おう 
口当たりの粗い安物のブランディーをぶっかけてオイルライターに火を灯すと、男の髪は激しく燃えたっけ け、毛皮を焼いた酷く嫌な匂いがする 
――すぐには殺さへん まだ、まだ、や 指を一本づつ落としたるわい ええか しっかり苦しめよ

き、き、

萎びた詩人は、まだ部屋の隅にいた
――それでもおまえは、詩を書くというのか? 本当に命がけなのか?

ああ、

ひとり殺すときには、まだ実感がある。しかし大勢を殺すときは、ほとんど夢心地だ。

だからとても卑しい場所から遙か天上の都に至るまで、私は分裂し、歌い、泣きじゃくり、生肉を喰らい、見境なく女を犯し、また人を殺した
凹凸のある極めて不安定な場所に置かれたガラスの器に密封された♂の私は、今はもう叫ぶことをしない
まともに人を信じてはいけなかった 瞳にお星さまを沢山輝かせ、アニメ声で美しく綺麗ごとを語る女は、実は獰猛な肉食獣だった
右のおじさんと、左のおじさんと、真ん中のおじさんと、その後ろのおじさんと、どんぶらこっこ どんぶらこっこ

き、き、

二度と恋愛などしない 既に、盗まれたものは 手垢がつき、とっくの昔に穢れてしまったからだ  



                      





自由詩 き、き、☆ Copyright atsuchan69 2011-07-27 13:23:04
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