あれよあれよという間の
blue

あなたのことが心配で戻ってきました 
と言う男がいて 
へっと思った
あたしは 
その男のことをそのとき初めて見たのだけれど
まるで ずっと昔から知っているようなふりをして
腰のあたりで 手を振ってみた
あれよあれという間の軽い攻防

マスカラのだまだまを気にしたり
男に心配される筋合いの在り処などを
探しているうちに
男はその逡巡に舌なめずりして
あたしの顎に指をひっかける
これからあたしは毎晩
むだ毛の処理をしなければならないだろう 
あれよあれよという間の軽い絶望

あなたは弱い人だから
と耳元で息を吹きかける男の
上から目線の重さを量る間もなく
あれよあれよという間の軽い変貌

あたしのなかで 何かが蠢めくから
奥歯で次から次へと噛み潰す
最後に唾をぺっと吐いて
あれよあれよという間の滅亡

のたうちまわる奴らを尻目に
ツイッターで女流作家Yをフォローして
 だから別れましょう と
口をぬぐう指の美しいことといったら
あれよあれという間の陰謀


自由詩 あれよあれよという間の Copyright blue 2011-07-27 12:32:44
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