I am “I am”
長押 新
数学の教科書の端に
赤ん坊と女の子の絵を書いた
学校に通っていたころ
妊娠して学校を辞めた女の子が
頭の中を通ったみたいだった
次の日になって頁をめくると
白い女が赤ん坊を抱いて
昨日より隅の方に座っていた
だから僕はミルクとパン
それからチューリップを書いて
彼女に与えることにした
おにぎりも書いたけど
下手だから石ころになってしまった
彼女はパンを食べるより先に
彼女は赤ん坊にミルクを飲ませた
彼女はチューリップを見せてやった
二人の目は輝いていたし
僕の目もきっと輝いてる
肉を何度も書いても石ころになる
何十個と石が転がってから
僕は太った牛と豚を書いて
そのための斧もプレゼントした
ピストルも必要だった
翌日朝早く頁をめくると
チューリップの線を解いて
石柱に繋がれた牛が
赤ん坊に乳を吸われていた
牛も豚も陽気にピストルの木の陰で涼んでいる
僕は昨日の夜には
ママの作ったビーフシチューと
アップルパイを食べていた
だからどうしても彼女にも
温かくおいしい料理を食べてほしくて
鋭い刃のナイフを送った
それでも彼女は木の種を植え
実った果実を食べている
僕の差し出した御馳走を食べずに
彼女は歌を覚えていた
ナイフが音符になったのを
木の葉が音符になったのを
僕は静かに見つめていた
僕が大人になったころには
この教科書は森になるんだろう
森の中には文字と数字が解けた
動物たちがいるだろう
もしも彼女が寂しそうなら
僕は男の絵を書こう
そこから僕が生まれるだろう