アンドロイド
未完

彼は初めて会った時、私をじっと見ていた。そして、
「ずっと(キミが)気になっていたんだ」と言った。
ビックリしたけれど、どこかで嬉しいとも思っていた。
それは、私を見つけた時、私のところまで迷わずまっすぐに、
向かってきてくれたからかもしれない。そんなところが、
安心したのだと思う。あなたのことをよく知らなかったけれど。
そして、私も最初からあなたに感じていたの。
「この人だったら、大事にしてくれそう」

それからの私達はいつも一緒で、すぐに親しくなれたよね。
本当に彼は正直な人で、なんでも隠さず、飾らずに話してくれた。
そういう気持ちが嬉しくて、いつも彼の言葉に静かに耳を傾けた。
初めて会った時から、まだ、そんなに時間が経っていないのに、
ずっと前から私を知っているかのように、彼は慣れた手つきで、
私に触れる。肩をぎゅっと抱かれて、あなたへ引き寄せられる。
そして、出会った頃と同じ目で私をじっと見つめる。

だけど、幸せな時間はいつまでも続かなかった。
いつの頃からか、彼は私を見ながら、他のことを考え始めていた。
私にはわかる。あなたに女ができたこと、知っているのよ。
あなたの言葉や態度から、気がつかないはずがないわ。
私はあなたの言葉のすべてに耳を傾け、身体を預けてきたのだから。
だけど、私は何も言えなかった。それでも、
言えるはずのない言葉が頭をグルグル回っている。
私の前で彼女にメールしないで。
彼女のためにデコメなんて使わないで。

結局、私は彼女に会うことになる。
そんなこと望んでいないのに、彼は私を連れて行き、彼女に私を紹介した。
そして、彼女の目の前で堂々と私を見つめ、いつものように触れてきた。
さすがに彼女は怒った様子で、「あなたって、本当にそういうの、好きね」
と口を尖らせた。彼はそんな彼女を気にする風もなく、
「すごく欲しかったんだ」と自慢そうに答えた。
それから、手に入れるまでの経過や私のことを話し始めると止まらない彼。
彼女にとってはおもしろくない話のようで、だんだんと表情が曇ってきた。
それに気がついた彼は慌てて、私をポケットに入れた。
そうだよね、私はあなたの携帯電話スマートフォンだから。


自由詩 アンドロイド Copyright 未完 2011-07-24 08:14:44
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