金運
はだいろ


今日、秋葉原の、
コインパーキングの前で、千円札を拾った。
ぼくが拾わなければ、
ぼくのうしろのやつが拾うのだから、
ぼくは迷わず拾ってやった。
千円札を拾うのは、小学校の、5年生の時以来、
実に、30年ぶりの快挙である。


秋葉原には、シェーバーの替え刃を買いにいったのだけれど、
替え刃が2500円で、
シェーバーそのものは2700円って、どうゆうことさ。
けっきょく、980円の安いのを買った。
東京へ出てきて、5年目となると、
いろんなものが、一気に買い替えの時期を迎えている。
そうゆう時期って、あるでしょう。
給料も下がったけれど、
ぼくのテンションも下がっているため、
買い替えるものもすべて劣化してしまっている。
リンのLP12という、
50万円のアナログプレーヤーが欲しいのだけれど、
ぼくが真空管を買っていたオーディオショップが、
フィギュアショップに変わっていた。
新しいおたくビルに入ってみると、
エロロリ漫画でいっぱいだったけれど、
ショーケースの中に、あの、昔、噂になった、
ドラえもんの同人誌の最終話が、
3600円で売っていた。
ぼくも、ネットで、その頃読んで、泣いた。
よほど、買おうかと思ったけど、やめた。


秋葉原へ行く途中、
小さな、こぎたないプラモショップがあって、
ジャガーのプラモ、デッドストックが12000円、
それが半額だった、
ものすごくかっこよかったから、
よほど、買おうかと思ったけど、やめた。


欲しい物は、あふれている。
山田風太郎の幕末小説が欲しいのだけど、
TSUTAYAで買うとポイントがつくと思って、やめた。
草森紳一の本は続々と再出版されているようで、
欲しくてたまらなくなったけれど、高いし、やめた。
ディスクユニオンで、タビー・ヘイズのLP、
ずっと買おう買おうと思いながら、今日もやめた。
サイモンとガーファンクルの、ハイドバークのライブ盤なら、
2枚組500円だったのに、どうしてか、やめた。
ああ、やめたやめた、
佐々木マキの漫画もやめた、
でも、来月の、SWA(新作落語創作集団)のチケットは、
オークションで落とした。
宝くじを買った。
サマージャンボと、2000万のやつ。


ぼくは、仕事をやめたい。
仕事をやめたら、収入がなくなる。
それでもやめたい。
やめたいったらやめたい。
もう我慢ができない。
なにかがすごく間違っている。
すごく間違っているのに、そこに甘んじる事を、
よしとする人生も、たくさんあるだろう。
だけど、よしとはしない人生も、
やっぱりあってよい。
後は、自分で決めることだ。
山口瞳も言っている。
西郷隆盛50で死んだ。
いや、なんのことやら、わからなくてもいいけれど。
西郷隆盛、50で死んだ。


拾った千円札で、
天丼600円と、アイスコーヒー450円。
小学校5年生のときに拾った千円札で買ったのは、
オバケのQ太郎と、
サイボーグ009の単行本だった。
あんなに、何度も読み返した本は、他にあっただろうか。







自由詩 金運 Copyright はだいろ 2011-07-23 19:08:14
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