上出来な夜
blue
その日いつもなら
それぞれが
それぞれの場所で
夕飯を摂っている時間
私はおとこと向かい合って
注文したパスタとピザを待っていた
いつもより私はよくしゃべった
髪をきれいに固めた店員が
チャイナブルーをうやうやしく持ってきた
勢いで注文してしまったのだけれど
なんだかおままごとに出てくる色水みたいだった
まずビザがきてそれからパスタがきた
私は
家でもう一度夕飯を摂るであろうおとこを思って
自分の皿におとこの分よりも多くのパスタを取り分けた
私にしては上出来だった
一仕事終えた私はとにかく
チャイナブルーを飲み
ビザをほおばり
パスタを箸で食べた
ベーコンとルッコラは箸のほうが食べやすかった
それにしても
こんな時間におとこと向かい合っていることは
全くもって私のポリシーに反していた
ピザが一切れ残ったところで
おとこの携帯が鳴った
申し訳ない、今日は用があってもう自宅なんです
とおとこがよどみなく答えた
さっきの店員が背中でその会話を聴いた
私はその邪魔な気配を
氷で薄くなったチャイナブルーと一緒に飲みほした
私にしては上出来だった
ビザがいつまでも目障りだったので
私は少し無理して残ったピザを食べた
無理して食べたからのどが渇いた
冷たい水がほしかったけど
おとこを早く家に帰さなければと思い
グラスに残った氷のかけらで我慢した
店を出て地上に続く階段を上りきったところで
げっぷがでた
チーズとトマトの味がせりあがってきた
外は非常に適切な濃密な空気が充満していた
上出来な夜だった