いない かたち Ⅱ
木立 悟






桃のにおいの手が
空を混ぜて
はじまる


闇のなかを見つめ返す
まぶたの奥の水があり
ひとつの葉に隠されている


海岸と夜
手のありか
通り雨


ほう おまえは
みどりなのかと目をつむり
髪を結い 髪を結う


次の返事まで
空白は育つ
星雲と まばたきの距離


忘れないという
約束はできない
裂かれては むらさきを吐いた


何かを静かに信じられたら
人ごみのなかで墓を拾う
何かをひとつ信じられたら


虹が帰り
暮れが来る
羽の果ての 小さな雨


花が 空に咲いては沈む
花を捜す手 応える声
夜は背に沿い 濃くなってゆく

























自由詩 いない かたち Ⅱ Copyright 木立 悟 2011-07-21 22:08:18
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