非在の虹

小さい蓑でも欲しそうな猿がいる
バスで山道をたどって行くと
樹木の陰にちらりと見えた
芭蕉なら喜びそうな猿だ

猿は群れから離れたのだ
猿は群れを憎んだのだ
群れには暗黙の了解があるから
暗黙の了解に従わせるから

ボスはその猿を激しく咬んだ
猿は痛みの中で仲間の猿の苦笑いを見た
落ちていた石をつかんでボスの脳天を打った

血まみれでボスは倒れたが
ボスと仲間への憎悪は消えなかった
そんな一匹の猿が時雨の中で動かずにいた


自由詩Copyright 非在の虹 2011-07-21 20:13:52
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