初夏凛々
村上 和

斜光に詠う
蝉の時雨
蚊帳越しの庭
縁側の隅に
境界線を引いて
あの頃は
まだ色鮮やかに

幼い君を
母の振りして
よちよちと歩かせた
差し延べた手の
焦げた肌に伝う
ひとすじの汗や
額に張り付いた髪の毛や
たったそれだけで
とても幸せそうに笑う

笑いながら覗く
ソーダ水に透かして
もくもくと起つ
積乱の雲
夕焼けを過ぎるまで
見た事もない
神様の居る国を夢に見て

いつもよりも凪ぐ
波間の向こう
時の無い
時間の果て
無風の夜に
今はなき姉妹が
口を開けて見守る
静かな嵐の
その行方

とんとんと
リズムをとって
子守唄
背中を優しく叩いて
ほら
泣き疲れて
眠れ
おやすみ
可愛い子


自由詩 初夏凛々 Copyright 村上 和 2011-07-21 03:15:53
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