蛙の王子の宝石箱
非在の虹
七月○日は妻の誕生日です。プレゼントはジュエリーボックスです。エナメルとビーズのちりばめられた、小さいけれどかわいらしい蛙の王子がついています。この日ばかりは、その蛙のように、妻にかしずいてもいいではないか、と思っています
ぼくは蛙の王子です
ほんとうはイケメンの王子なのですが
魔法使いに蛙にされてしまったのです
今では金の王冠ならぬ蓮の葉の王冠で
ちょっと泣きべそをかきながら
我慢しています
でもこれからは
あなたのお役に立とうと思っています
あなたの大切なペンダントをしまうため
あなたの思い出の指輪をしまうため
あなたの大好きなブローチをしまうため
そして
あなたの秘密もどうぞ
ぼくにしまってください
あなたのために
永遠に蛙の王子でいることを
ぼくは決心したのですから。