なにとなににさよならを告げればいい
ホロウ・シカエルボク
不思議なくらい人通りの途絶えた
日付変更線を待つ中央道路で
鮮やかな羽のカラスたちが
産業廃棄物で空腹を満たしている
表沙汰に出来ない雨みたいな空気
ゆっくりと横切る風が妙になつっこい音を立てる
夏になるんだよ
運命にうなだれる夏
熱にやられすぎて
誰も愉快なフレーズなんか聞かせてくれやしない
冷蔵庫に少し残った
オレンジジュースのことを思う
美味いやつほど
急いで飲まないと駄目になる
ずっと忘れていた音楽が頭の中で鳴り続けている
あちこちの自販機の周りにロンサムって書いてあって
今日がそろそろおしまいだってなんとなく判った
ハンバーガー屋の勝手口からコンビニエンス・ストアまで
硬球みたいなネズミが猛烈なスプリント
生きることが命題なら
たいてい優雅には見えないものだ
シグナルが点滅に変わる
街はひそかに死んでいった
誰かの逸話を話してるみたいになった
ずっと忘れていた音楽が頭の中で鳴り続けている
チープな靴底が
いつでもお役御免の機会をうかがっている
一台のバスが通り過ぎる
客席には誰も乗っていない
そんな時間に
客を乗せるバスが走るわけがない
小さくなってゆくがらんどうの客席
小さくなってゆくがらんどうの…
明かりの届かないところまでそいつが走ってゆくのを
見送ることはなんとなく止めにした
ただ行き過ぎてしまうものたちは
編集で切り落とされた
映画の素材みたいに冗長だ
ふと、気づくと
壊れた街灯の下で
記憶の中の明かりを頼りに歩こうとしていた
夜明けにはまだ遠く
そして
眠りは半ば諦めてしまっていた