十九歳の夏
長押 新

ゆれうごいては
もがいていた死人が
たしかにわたしだった
となりでふるえているだれかが
だれなのかさえしれない
くるしい、
くるしいとうなだれて
はげしくおうとした
なつのあつさがじりじりと
かすかにひふをやいて
すぐ
すぐ
すぐすぐ、
すぐ
すぐ
すぐすぐ、
大人になれと
せみまでないている
よいすぎてはんきょうする
そのころにはすっかり
さけではいをみたし
いにはいったかなしい、
かなしいが、
それだけはきだせずに
ひっかかるようにのどをおして
すじのようにさけて
ほんとうにさけちまって
死体のせなかから
わたしがうまれ
せみのように
たしかに大人がうまれ
ながくつづいた
こどもをぬぎすてていた
なつのあつさが
そうさせてしまって
つぎつぎと友人たちが
くるしい、
くるしいとおうとしながら
だらだらしたいとひいて
大人にうまれる
こうなればらいねんには
しんじまってるかもしれない
そうしてまた肩をよせあい
やい
やい
やいやい、
やい
やい
やいやい、
よるがあけるころには
もう死体のにおいに
いやけがさして
なつのたいようのぼれと
はいをけむりがみたして
くちのまわりに
おたがいのだえきをつけて
わをつくるように
そうっとあさをまった
だれもがみんな
大人になれとなきはじめる
わたしも
ないた




自由詩 十九歳の夏 Copyright 長押 新 2011-07-15 09:49:20
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