みみず水無月
小池房枝

蜘蛛の仔を風に散らせよラプンツェル

ベレニケの髪の毛あふれて銀河かな

ラプンツェル オオミズアオの繭を編む

ラプンツェル オオミズアオの繭つむぐ

そよ風がそよ吹くたびにネムの花

爪ほどの巻貝の中のプリオシーン

宇宙そらの色ラピスラズリの天球儀

おだやかな海だったんだねクラゲ化石


赤猫を走らせぬよう火をあやす

開かれた水門は鉄扉ナマズ淵

早苗田の畦に合鴨一休み

ホモイ、人よ。すずらんの実はまだ青かったよ

ほろほろとなまこの目からホロスリン

ヒマラヤに吹く風が来て田鶴渡る

集真藍が集める藍のスペクトル

アメダスとカゼダス梅雨が走り出す


あじさゐが自分の色を思い出す

秋桜は今年も強気栗花落ついり

梅雨の岸辺野茨がまた咲いている

許可局の声降る木陰ホトトギス

ミジンコの目は本当に花模様

黙示録、パンドラの箱に尚ひとつ

栗が咲きだだ漏れの甘さ強いられる

泰山木ここは泰山ではないよ


平伏せよ風下の我は草の王

美しき草野原 草の名は知らず

濁天をへろんへろんとサギが飛ぶ

砂浜の風にも耐えて月見草

外つ国のコオロギ日本で鳴いている
 
梅雨入りの風ネムふわりと船出する

水筒とランゲルハンス島の薔薇

薄紅のケセランパサラン合歓の花


俳句 みみず水無月 Copyright 小池房枝 2011-07-11 21:39:35
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