詰め合せお中元セット
たま

 暑中お見舞い申し上げます。   たま



 地下鉄

地下鉄はまっすぐ走るものだと思っていた
車体が傾いてとなりの女の顔が急に近づいた
ね、 複雑でしょ・・
耳元の吐息はいつも体温を超えて
名古屋は暑い街だった
毎日 女と寝ていた気がする
そんな街だった



 峠

あの峠を越えたら、ひと休み
美味しいお茶を一緒に飲みましょう
お土産はないけど笑顔でいます
ぽとりと落ちた蝉の鳴声
あなたの膝で待っているでしょうか
いくつもの夏があの峠を越えたように
ぼくは、ぼくの夏を背負って越えて行きます



 カミオカンデ

空路から見下ろす街の灯りは小さく
どれも同じ大きさだった
星のような灯りの影に
粒子のような人びとが群れて
息づく気配がする
まどろみの中で機体がゆっくり傾いて
真っ黒な海面が見えた
あの海へまっすぐ墜ちてゆきたいと願うぼくは
やはり流れ星の末裔なんだろう



 紙ヒコーキ

白い雲を折りたたんで紙ヒコーキ飛ばします
まっすぐあなたに向けて
来る日も、来る日も
春の嵐を越えて、黄砂の空を越えて
あなたの足元に力尽きた紙ヒコーキが届いても
それがぼくのいのちだとは気づかないと思う
でも、ほんの少し
振り返ってください
ぼくが生きた遠い空とクニを



 コスモス

さようならの種は 届きましたか
去年の夏に咲いていた コスモスの種
いいえ、もう未練はありません
さようならを届けるのが ぼくの仕事なんです
もうすぐ夏が来るから 
その種は早く蒔いてください
旧式の花が咲きます
夏の終わりに



 海

水平線に隠れていたのは ぼく 
あなたが浜辺で遊ぶ日は 雨の日も晴れる
だって 風も雲も ぼくの友だちだから 
あなたが浜辺で遊ぶ日は 
小さな波の 恋もうれしい



 嗅ぐ

哀しいと言わずに額を寄せて
ぼくの瞳の奥にあるものを嗅ぐ女
冷たいかと訊ねたら
ぺろんと鼻を舐めて
もう慣れた。 と言う
群れを離れたふたりは
抱き合って氷の岸辺を渉った
オリオンが宿る
空の下を



 腕時計

なぜか、あなたの腕時計を見たことがない
いつもどこかに隠しているような気がするの
日暮れが早くなって、わたしの時計は愚図りはじめた
まだ、時間ある?
うん、あるよ。
時計見なくていいの?
うん、老眼だから見てもわからない。
そう言って、あなたは笑った
わたしだってたまには
あなたの時間を覗いてみたいのに



 クロスワード

甘酸っぱい部屋の ソファに額を押しつけて
見えない顔が喘いでいたとしても 
香織はシューアイスが大好き
やわらかい香織のお尻に 
溶けたアイスで落書きをする
【色即是空】 
からみ合ったふたりの 解き明かせない空間が
なぜか 愛おしい



 メロディ

切手も貼らずに投げ込んでいいの?
ポストの中のさようなら
いいんだよ
さようならはことばではなくてぼくのメロディ
さようならに切手はいらないの
もし、届いたら
あなたを傷つけるから
歩きはじめた明日を失くすから



 女

どこから女で
どこまでが女であるのか
ようやくわかりかけてきたところだが
だからといって何かの役に立つかというと
その予定もない
ぼちぼち、男も
店じまいするところだ















自由詩 詰め合せお中元セット Copyright たま 2011-07-07 16:57:42縦
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