反転
ズー
空白にかえっていた
天使のことばが
一文字が
けむりがしみる、瞼を
とじると、裏側に
引っついていた
教会にいく日曜日に
父さんからくすねて
おいた煙草に火をつけた
「ぼくはあなた
のゆびをすべて入れて
ほしくなる朝があるんだ
やっぱり、
夢をみる日があって
スキップをしながら
青い空に吸い込まれて
いく
飴細工を
束ねる、あの子は
あの子の
髪は一本残らず、ぼくの
涙でぬれて、
夢のなかで、
ぼくの涙を想像している
あの子をみたことが
ありますか?
ぼくはあるんだ
イエスさま、」
きれいな女の子のことを
尋ねても
「おぼえてないわ」と
言うだけになり
ぼくらもいつの間にか
話題にしなくなっていた
秋と、冬をすごした頃に
その、ぼくらの背中を
母さんは夏のあいだ中
眺めていたってわけ
なんだけど
その光景を生意気な弟と、ぼくらも
ひどくささくれ立った
家の窓枠にしがみついて
毎日眺めていた
きれいな女の子だった
毎日僕の家の前をスキップしながら通りすぎた
飴細工みたいな髪を
束ねた女の子が
「そんなの嘘だ」って
いいたくなるくらいの
「朝があるんだ
十本すべて
のゆびを、ぼくの
からだに入れてほしい
そう、
うん、
あなたのゆびを
ぼくは、
夢をみる日があって、
時々ぼくの涙を
夢のなかで想像している
でも、イエスさま、
ぼくの涙をみたことが
ありますか?
ぼくはないんだ」
あなたの為
だけの、ことばを
書いてみた
空白になった
本の一部分に
そんなこと
ばからしくて言えなか
ったけど、
実際には
あなたを
信じる天使みたいな
ものなんだと、
ことばたちは
ぼくのなかに入れた
自分に
こう、言い切れたはずだ
ぼくは鏡にうつっている
黒目の上にのせていた
瞼の裏側に一文字だけ
引っついて、痛がゆく
なってきていた
ぼくはゆびさきにひとつ
ひとつ、あなたに纏わる
ことばをつけて
日曜日まで
まだ何日間かあった朝に
教会にいく