いぬ
林帯刀

それははちみつのいろ
きんいろにかがやくアスファルト

カーブの手前
かげのように
染みがきえない

きえないでいる

からすの世界はあかむらさきで
いいものだけ光ってる
たとえばおいしそうなトカゲとか
コンビニ弁当のたべかすとか
ひかれた
いぬ
とかね

呼んでる
てをふって
カーブの手前で

昨日のきのう
そこにはいぬ
だった
毛皮と血と肉とほねが
あって
たぶん近所のひとがかたづけちゃったんだ
きれいなきんいろで
光っていたのに

内臓のきれはしくらいはありつけた ?

電線からおりてきて
染みをつつく
土みたいにはくだけない
くちばしにはなにも
ついてこないでしょう?
べったりとしたあの液体
すきだったのにね
もうないのね

あめがふるまでのしんぼう
染みがながれて
排水溝にすべりこんでしまえば
もう
おもいだすこともないでしょう
アスファルトを
つついてくちばしが
ふるえることも

ああほら
小学校のプールの裏
すこしひかりがもれてる
いってみたらいいよ
きっといいものがあるよ
だってあんなにはちみつのいろをしてる


あのあざやかないろはわすれない
きみのうちがわをながれていたのは
はちみつなんかじゃないのを
ぼくはしっていた



自由詩 いぬ Copyright 林帯刀 2003-10-17 12:42:00
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