チョーク
長押 新


朝からチョークで
線を引いていた
家にチョークで
線を引いていた
夜に引いた線が
触れられたり踏まれたりして
薄く消えかかっていたからだった
ぴょんと飛び越えたり
軽く跨いだりしてくれたら
私は毎朝白いチョークで
線を引かなくたっていい
粉ぽい体の匂いのせいで
二回もお風呂に入らなくたって
わたしのからだも
あなたのからだも
そんなに汚れてはいないのに
玄関のドアノブを
見知らぬ人が触ったから
引っ越ししないといけない
ぴょんと飛び越えたり
軽く跨いだりしてくれたら
私は毎朝白いチョークで
線を引かなくたっていい



自由詩 チョーク Copyright 長押 新 2011-07-04 15:50:54
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